デキるビジネスパーソンは「手ぶら」で歩く。というのを流行らせたい。

Shibuya Crossing

街中を歩くことが多くなった。すれ違う人々。誰もが当たり前のようにバッグを身につけている。あの中には何が入っているのだろう。そして「手ぶら」と「手ブラ」を使いわける日本人についての考察をはじめる。

手ぶらで移動するようになって、ずいぶんと経ったような気がする。僕がなぜ手ぶらなのか。手ぶらに至るその経緯、そしてその結果得られたもの。語り尽くした2時間半。手ぶらの真実が明らかになる。

そして手ぶらへ

数年前まではショルダーバッグにたくさんの荷物を詰め込んで歩いていた。MacBookiPad、紙の書籍、メモ帳、ケーブル類、モバイルバッテリー、将来の不安。当然、肩が凝る。なるべく左右同じくらいの負荷になるようにバッグを交互にかけていたのだけど、左右の肩だけでは足りなかった。肩があと4つくらいあればいいのに、と思っていた。

モノがないと不安だった。もしも外出先で何か必要なものが出てきたら。空き時間ができたら、それを有効に使わなければ。不安を消し去るようにモノを詰め込んだ。その度にバッグは重くなっていった。そしてバッグの中は常にごちゃごちゃとしていた。ひっくり返すとハイチュウが2つ転がり出てくる。

そんな時に出会ったのが「佐藤可士和の超整理術」という本だった。空間、情報、思考の整理術を順を追って解説している。空間の整理術の中に、モノを持ち歩かないという内容のことが書かれていた。

手ぶらの実践

バッグの中を整理するのにおすすめされていたのが、帰宅したらバッグの中身をすべて出すという方法。これだと惰性で持ち歩いているモノがなくなる。これはすごい。Tカードのデザインのようなシンプルかつ大胆な方法だと思い、さっそく実践する。

家に帰って、バッグの中を空にする。そうして翌日、出かける時にバッグに荷物を入れるのだけど、これは本当に必要なのかと問いかける。暇つぶしの本は必要だろうか。ノー。メモ帳は必要だろうか。ノー。世界に戦争は必要だろうか。もちろん、ノー。

こうして持ち物をチェックしていくと、かなりのモノがiPhoneで代用できることがわかる。暇つぶしに読書やゲームもできるし、メモも取れる。サーバーにトラブルがあっても、iPhoneからアクセスして対処できる。ケーブル類は自宅とオフィスに置いておけば、持ち歩く必要はない。別の場所に出かけている時にバッテリーが減ってきても、充電スポットはたくさんあるし、最悪コンビニで小型のバッテリーを購入すればいい。

最終的に荷物は、iPhoneと財布、鍵と薬だけになった。佐藤可士和と同じく、名刺は必要な時のみ持って行く。もはやバッグは必要ない。

iPhoneはケースに入れず裸でポケットに入れている。ケースに入れると、舐めた時の味が変わってしまう。財布はabrAsus(アブラサス)の「薄い財布」を使っている。価格はやや高いが作りがしっかりしていて、5年ほど使っていても劣化する感じはない。薄いのでポケットに入れていてもかさばらない。カードが5枚しか入らないというのも潔い。免許証、保険証、クレジットカード、キャッシュカード、最低限必要なものだけを持ち歩いている。

ポイントカードは持ち歩かない。クレジット機能付きのTカードだけだ。高額なものはアマゾンで買うかTポイントの貯まるカードで支払うので、その他のポイントカードは誤差でしかない。頑張って500円分のポイントを貯めるより、月に1度ランチをカキフライ御膳から牛丼に変更すればいい。何枚ものポイントカードを持ち歩く煩わしさから解放される。薄い財布に入りきらない小銭が出たら、レジの横の募金箱に入れればいい。身軽になる権利をお金で買っていると考えることもできる。

Zaimで家計簿をつけている。もらったレシートはiPhoneでZaimに入力してすぐに捨てる。薄い財布がレシートで膨らむことはない。本当は財布も持たずに電子マネーだけで過ごしたいのだけど、まだ現金が必要な店も多いので実現していない。

After 手ぶら

バッグを持たなくなって、肩こりが緩和された。これは物理的に肩への負担がなくなっただけでなく、持ち物が常に整理された状態なので精神的にも効いてるんじゃないかと思う。

歩く姿勢もよくなる。歩くペースも自然と速くなる。重たい荷物を持った現代人の合間をぬってスタスタと歩いていく。遠くまで歩けるようになる。以前であれば自転車に乗っていた距離でも歩くようになった。駐輪場を気にしなくていいので快適だ。

手ぶらは気分がいい。最初はモノがない不安を感じるが、それはすぐに慣れる。意外と何かが必要になるということはない。何かに備えるというのはキリがない。道端で急に実験がしたくなった時に備えるなら、ビーカーやフラスコを持ち歩かなければならない。それは実験内容をiPhoneでメモして、自宅の実験台でやるべきだと思う。

手ぶらは一度体験するとやみつきになる。実際にモノが必要ないというのも体験してみるとよくわかる。まずは帰宅してバッグを空にするというところから始めてみてはどうだろうか。

手ぶらは社会を変える

バッグを持っていないと変人扱いをされることが多い。僕の場合はバッグを持っていていも挙動不審だと言われるので、もはやバッグのせいではないと思っている。ビジネスの現場でもバッグを持っていなければ変な目で見られるということがあるらしい。けれども、手ぶらでいるとうことは、常に本質を追い求めるということだ。そして常に整理されている状態にある。モバイルへのリテラシーも高い。手ぶらこそデキるビジネスパーソンの条件だという気がする。

澤穂希スティーブ・ジョブスも2歳くらいの時は、きっと手ぶらで歩いていた。成功するためには、手ぶらでさえいればいい。あとは家でゲームをし続けていても、きっとうまくいくだろう。手ぶらはすばらしい。

ひとりの努力では社会は変わらないが、ひとりひとりの努力がなければ社会は変わらない。何かとストレスフルな現代人を解放するには手ぶらしかない。最初に椎茸を食べようとした人を他の人は止めようとしたかもしれない。けれども最初に食べた人がいたからこそ、いまでは椎茸を食べることが普通になっている。いまはまだ手ぶらでいると笑われるかもしれない。でもそれが当たり前の社会になれば、逆にバッグを持っている方が笑われるだろう。

冬はコートを着るのでポケットが増える。この冬、手ぶら生活を始めてみてはどうだろうか。大嫌いな椎茸を皿の端に避けながら、そう提案してみる。